原状回復 負担割合計算 English

経過年数と耐用年数の考え方

退去時に借主が原状回復費用を負担する場合でも、ガイドラインは修繕費の全額を借主が負担するのではなく、建物や設備の経過年数を考えるとしています。このページでは、その理由と計算のしかた、例外をガイドラインの該当ページとともにまとめます。

なぜ経過年数を考えるのか

故意・過失による損耗であっても、そこには必ず経年変化と通常損耗が含まれています。その分は借主が賃料として支払ってきたので、退去時にも負担させると二重に評価することになる、というのがガイドラインの説明です(ガイドライン p.12)。

「賃借人の負担については、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当である。」ガイドライン p.12

また、1年で毀損した場合と10年で毀損した場合で同じ負担では、借主どうしの公平も欠くとしています(ガイドライン p.12)。

残存価値は1円まで下がる

以前は耐用年数を過ぎても残存価値10%が残る計算でしたが、平成19年の税制改正を踏まえて考え方が変わりました。

「平成19年の税制改正によって残存価値が廃止され、耐用年数経過時に残存簿価1円まで償却できるようになったことを踏まえ、例えば、カーペットの場合、償却年数は、6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を描いて経過年数により賃借人の負担を決定する。よって、年数が経つほど賃借人の負担割合は減少することとなる」ガイドライン p.12

つまり、新品で入居して耐用年数6年のクロスなら、1年ごとに約16.7%ずつ負担割合が下がり、6年で1円になります。参考資料の例では、3年で50%、4年8か月で約22%(1 − 56/72)です(参考資料 p.17)。

計算式

借主負担の目安 = 工事費 ×(入居時の価値 − 入居月数 ÷(耐用年数 × 12))

結果が0以下なら1円です。この式は計算機と同じものです。

入居したときに新品でなかった場合

中古の部屋では、設備ごとに交換時期がばらばらで、その履歴を貸主や管理会社が把握していないことも多いため、ガイドラインは経過年数を入居年数で代わりに数え、入居時の状態に合わせてグラフをずらす方法をとっています(ガイドライン p.13)。

「入居時点の状態でグラフの出発点をどこにするかは、契約当事者が確認のうえ、予め協議して決定することが適当である。例えば、入居直前に設備等の交換を行った場合には、グラフは価値100%が出発点となるが、そうでない場合には、当該賃貸住宅の建築後経過年数や個々の損耗等を勘案して1円を下限に適宜グラフを決定することとなる。」ガイドライン p.13

参考資料は具体的に次の3つを示しています(参考資料 p.17)。

入居時に価値が決められていない場合、出発点をどこにするかは貸主との話し合いになります。入居時の写真や確認リストが手元にあれば、その根拠になります(ガイドライン p.3~5)。

部位ごとの耐用年数

ガイドラインの別表2(ガイドライン p.22~24)の年数です。

部位・設備耐用年数出典
壁・天井のクロス(壁紙)6年ガイドライン p.23
クッションフロア6年ガイドライン p.22
カーペット6年ガイドライン p.22
畳床(畳の芯の交換)6年ガイドライン p.22
畳表(表替え・裏返し)考慮しないガイドライン p.14, p.22
襖紙・障子紙考慮しないガイドライン p.14, p.23
襖・障子などの建具、柱考慮しないガイドライン p.23
フローリング(部分補修)考慮しないガイドライン p.14, p.22
フローリング(全体の張替え)建物の耐用年数ガイドライン p.14, p.22
流し台5年ガイドライン p.24
エアコン・ストーブなどの冷暖房機器6年ガイドライン p.24
電気冷蔵庫・ガス機器(ガスレンジ)6年ガイドライン p.24
インターホン6年ガイドライン p.24
主に金属製以外の家具(書棚・たんす・戸棚など)8年ガイドライン p.24
便器・洗面台などの給排水・衛生設備15年ガイドライン p.24
主に金属製の器具・備品15年ガイドライン p.24
ユニットバス・浴槽・下駄箱(建物に固着したもの)建物の耐用年数ガイドライン p.24
鍵の紛失(シリンダー交換)考慮しないガイドライン p.24
クリーニング(通常の清掃をしていない場合)考慮しないガイドライン p.24

経過年数を考えないもの

次のものは経過年数を考えず、借主に原状回復義務がある毀損なら補修費用がそのまま借主の負担となります(ガイドライン p.14)。

建物の耐用年数を使うもの

フローリング全体の張替え、ユニットバス・浴槽・下駄箱(建物に固着して一体不可分なもの)は、建物の耐用年数で計算します(ガイドライン p.22、ガイドライン p.24)。建物の年数はガイドライン資料8(ガイドライン p.168)にあります。

建物の構造耐用年数
木造・合成樹脂造(住宅用)22年
木骨モルタル造(住宅用)20年
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造(住宅用)47年
れんが造・石造・ブロック造(住宅用)38年
金属造(骨格材の肉厚4mm超)34年
金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下)27年
金属造(骨格材の肉厚3mm以下)19年

参考資料の例では、築10年の木造アパートに4年住んで床全体を張り替える場合、退去時の経過年数は14年、負担割合は 1 − 14/22 ≒ 36.4% で、195,000円のうち70,909円が借主負担の目安です(参考資料 p.21)。

耐用年数を過ぎても負担がある場合

経過年数を超えた設備でも、借主には善良な管理者として注意して使う義務があります。ガイドラインは、まだ使える設備を故意・過失で使えなくした場合や、借主がクロスに故意に書いた落書きを消す費用(工事費や人件費等)などは、借主の負担となることがあるとしています(ガイドライン p.12、参考資料 p.17)。

このページの出典

  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月、全文PDF mlit.go.jp/common/001016469.pdf(確認日 2026年10月31日)
  • 国土交通省住宅局「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』に関する参考資料」令和5年3月 mlit.go.jp/…/001611293.pdf(確認日 2026年10月31日)
  • 国土交通省「『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について」ガイドラインの案内ページ(確認日 2026年10月31日)